ほとんど全ての男子高校生がそうであるように、この話の主人公である野宮槙尾もまた、いかにして劇的な出会いをするかを気にする健全な男性だった。ただ、その方向性が間違っていただけなのだ。彼は、今日も朝食とは別に「それ」用の食パンを用意する。焼き方はレア。熱過ぎるのはノーサンキュー。朝食を食べ終えると同時に焼きあがる食パン。決戦への用意は整った。いよいよ登校である。鞄なら学校に置きっぱなし、悪いヤツとはだいたい友達。といえば聞こえはいいが、つまりはパシリだった。昨日の彼は、鞄を焼却炉に隠されたまま、とうとう見つけることは出来なかった。そのパシリの彼の一日が始まる。靴紐を結ぶ。食パンをくわえる。目指すは玄関を出たところ百メートル行った、あの曲がり角である。七時半。急がずとも余裕で登校に間に合う時間だ。しかし、彼は走る。走る。パシリ体質を活かして。あの曲がり角を目指して。五十メートル。十メートル。一メートル。今日の運命やいかに。
ここに、もう一人の登場人物がいた。彼女、小西靖代もまたほとんど全ての女子高生がそうであるように、いかにして劇的な出会いをするかを夢見る健全な女の子だった。ただ、その方向性が間違っていただけなのだ。今日は彼女の記念すべき転校先の高校へ登校する初めての日だった。おろし立ての制服を着た彼女は、これまた新調したローファーとハイソックスで玄関を出た。登校初日は担任への挨拶もあり、早めの登校を余儀なくされていた。時刻は七時半。初めての通学路。曲がり角にさしかかろうとしていた。
っていうか今揺れた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1111怖いので続きは今度。